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PHステンレス鋼とは、析出硬化系ステンレス鋼の別称で、析出硬化の英訳 Precipitation Hardeningの頭文字をとってPHと付けられています。
析出硬化系ステンレス鋼は、クロム-ニッケル系のステンレス鋼にアルミ、チタン、ニオブ、銅などを添加し、それらの化合物を析出させることで強度を高められる材料です。
この種類はステンレス鋼としての耐食性を有しながら、析出硬化で強度を高められるため、航空機などの信頼性を求められる用途にも使用されています。
「17-7PH(ジュウナナ・ナナ ピーエイチ)」は析出硬化系ステンレス鋼の代表鋼種SUS631の別称です。
最初の数字「17」がクロム(Cr)、次の数字「7」がニッケル(Ni)の成分含有量を表していて、その後ろに析出硬化を表すPH(Precipitation Hardening)が付いています。
ちょこっとメモ
17-7PHはアームコ社(現AK Steel)というアメリカの会社で開発されました。析出硬化型ステンレス鋼の初期は主に軍事用として利用されていたことから、アメリカの軍規格AMSやMILなどで採用されたようです。 その後、他の析出硬化型ステンレス鋼や耐熱鋼などと共にAISI(アメリカ鉄鋼協会規格)に定められ、汎用鋼として用途が拡大し、JIS規格にも採用されるようになりました。
前述の通り、17-7PHはSUS631の別称と解説いたしましたが、これ以外にも同様にPHが入った鋼種名があります。
SUS632J1の別称です。15Cr-7NiにCuとTiを添加した材料です。
17-7PHと15-7PH(SUS631とSUS632J1)の主な違いは、冷間圧延率による硬さ上昇、析出硬化熱処理(H処理)による硬さ上昇量です。
詳しくは こちら に記載していますのでご覧ください。
また、15-7PHと近い鋼種にはAISI632(UNS S15700)の「PH 15-7Mo」などもあります。
SUS630の別称です。17Cr-4NiにCuやNbを添加した材料です。
これらのような成分を用いた記載の仕方は、材質名を見ただけで特徴を捉えやすい人もいらっしゃるのではないでしょうか。言語が異なっても成分からどんな材料か伝わるのかもしれませんね。
他にはどんなものがあるか、成分由来の通称をもった材料をピックアップしてみました。
横にスクロールしてご覧いただけます。
成分由来 の材質名 |
規格 | 分類 その他名称 |
説明 |
SK85 | JIS | 炭素工具鋼 | Steel Kogu(工具) C含有量 0.8-0.9%の中心0.85 |
SK95 | JIS | 炭素工具鋼 | Steel Kogu(工具) C含有量 0.9-1.0%の中心0.95 |
S50C | JIS | 炭素鋼 | Steel 0.47-0.53%の中心0.50のC含有量 |
S45C | JIS | 炭素鋼 | Steel 0.42-0.48%の中心0.45のC含有量 |
S20C | JIS | 炭素鋼 | Steel 0.18-0.23%の中心0.20のC含有量 |
Ti 3-2.5 | 通称 | βチタン | Ti基-Al3%-V2.5%の含有量 |
Ti 15-3-3-3 | 通称 | βチタン | Ti基-V15%-Cr3%-Sn3%-Al3%の含有量 |
NiCr8020 | DIN | NCH-1 | NiとCrの含有量がおおよそ80%と20% |
NiCr6015 | DIN | NCH-2 | NiとCrの含有量がおおよそ60%と15% |
CuMn12Ni | DIN | マンガニン | Cu基-Mn12%の含有量+Ni添加 |
CuMn7Sn | DIN | ゼラニン30 | Cu基-Mn7%の含有量+Sn添加 |
以上、17-7PH、15-7PHの名称の由来や類似する表記を持つ材料についてを解説いたしました。
当社は永年培った 冷間圧延技術 で 「SUS631(17-7PH)」「SUS632J1(15-7PH)」 を加工&提供しています。
機械的性質、板厚精度などお困りごとや疑問点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
析出硬化系ステンレス鋼 SUS631, 632J1, TOKKIN® 350
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