
金属の表面処理には何がある?
主な表面処理の種類と特徴を解説
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結論から言いますと、ステンレス鋼には、磁石に「つくもの」と「つかないもの」があります。
では、どれが磁石について、どれがつかないのでしょうか?
本記事では、磁石につく種類とつかない種類を簡単に解説していきます。
実はステンレス鋼が磁石につく、つかないは、金属内部の組織の状態に影響されます。
ステンレス鋼は、化学成分や加工によって「オーステナイト」「マルテンサイト」「フェライト」といった金属組織に変化するのですが、その金属組織の種類によって磁石へのつき方が変わってくるのです。
ステンレス鋼の中で磁石につかないのは、SUS304に代表される「オーステナイト系ステンレス鋼」となります。
オーステナイト系ステンレス鋼は、固溶化熱処理状態でオーステナイト組織であり、この組織の時は非磁性です。
ちょこっとメモ
業界によっては「高級なステンレスは磁石につかない」「安価なステンレスは磁石につく」と言われたりしますが本当でしょうか?
オーステナイト系ステンレス鋼は、ステンレスの基本形であるFe-CrにNi(ニッケル)を添加することで、金属組織をオーステナイトに安定させています。金属自体の価格が高いNiを多く含有することから、Niを含有しないステンレスより価格が高くなる傾向にあるため、このように言わます。
ただし、ステンレスの価格要素は成分だけではありませんので、設計の際はご留意ください。
しかしながら、ここで注意していただきたいのが、ステンレス鋼は冷間加工や熱処理によって組織変態をするということです。
オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS301やSUS304は、固溶化熱処理状態ではオーステナイトで非磁性なのですが、冷間加工をすると金属組織がマルテンサイトに変態して、磁性を帯びるようになります。
加工量が大きいほど加工硬化により強度が高くなりますが、マルテンサイト量も増えますので、磁性も強くなるということになります。
対して、SUS305やSUS316L、SUS310Sなどの鋼種は、加工による組織変態がSUS301やSUS304よりも起こりにくいため、加工後も非磁性を保つことができます。
(鋼種により程度の差はありますので、詳細はお問い合わせください。)
当社のオーステナイト系ステンレス鋼ラインナップはこちら
<当社ラインナップ>SUS301, SUS304, SUS304L, SUS316, SUS316L, TOKKIN 305M※ ※当社オリジナル鋼種
鋼種によって程度の差はあるのですが、オーステナイト系以外のステンレス鋼は、基本的には磁石につきます。
その中でも、磁性が必要な用途によく使われるのが、SUS430に代表される「フェライト系ステンレス鋼」となります。
この種類はあまり高い強度は得られませんが、常時磁性があるのが特徴です。
当社のフェライト系ステンレス鋼ラインナップはこちら
<当社ラインナップ>SUS430, FS-1※, TDS-1※, TDS-J※ ※当社オリジナル鋼種
ステンレス鋼の種類は、オーステナイト系、フェライト系以外に「マルテンサイト系」や「析出硬化系」などもありますが、これらも仕上げ状態によって磁性に強弱がでますので、詳細につきましては、個別でお問い合わせください。
本記事では、磁石につく・つかないで解説しましたが、実際に部品としてお使いになる場合は、外部環境に対する反応度合も重要になってきます。
また、磁性だけではなく、強度や耐食性、価格など、その他の特性も考慮する必要があります。
当社ではお客様のご要望にお応えするため、複数の特性を併せ持つ当社独自のステンレス鋼を多数ご用意していますので、以下も参考にご検討ください。
横にスクロールしてご覧いただけます。
非磁性/磁性 | 鋼種名 | 系統 | 特徴 |
---|---|---|---|
磁石につかない |
オーステナイト系 | 500HVの極めて高い強度、高いばね性でも非磁性を維持できる当社オリジナル鋼種。 | |
オーステナイト系 | JIS規格のSUS305よりも非磁性を安定させた当社オリジナル鋼種。高い加工率では弱い磁性を帯びるため要求レベルによっては注意が必要です。 | ||
オーステナイト系 | 加工によるマルテンサイト変態が緩やかな汎用鋼種。高い加工率では弱い磁性を帯びるため要求レベルによっては注意が必要です。 | ||
磁石につく |
フェライト系 | SUS430相当以上の高い軟磁気特性、耐食性、加工性を併せ持つ当社オリジナル鋼種。 | |
フェライト系 | SUS430相当以上の高い軟磁気特性とオーステナイト系ステンレス鋼並みの耐食性を併せ持つ当社オリジナル鋼種。 | ||
析出硬化系 | 引張強さ2000MPa級の極めて高い強度とフェライト系ステンレス鋼並みの軟磁気特性を併せ持つ当社オリジナル鋼種。 |
参考記事|ステンレス鋼の磁性と強度の関係
参考記事|軟磁性材料は錆びやすい?
当社では、ステンレス鋼以外でも、軟磁気特性や非磁性に優れた多くの材料を扱っています。
用途や加工方法によっても、ご提案する材料が変わる場合がありますので、鋼種選定で迷われた際は、まずはお気軽にご相談ください。
※求める品質レベル、ご予算などに応じて、当社ラインナップはもちろん、それ以外からもご提案が可能です。
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