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金属の時効とは?時効処理と析出硬化処理は違うもの?

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金属の時効とは?時効処理と析出硬化処理は違うもの?

時効とは?時効処理と析出硬化処理の違い、時効硬化(析出硬化)する合金などについて解説します。


時効(じこう)とは

「時効」と聞くと、刑事ドラマなどを連想される方が多いと思いますが、今回お伝えするのは金属においての「時効」になります。
金属(合金を含む)は、時間の経過に伴い機械的性質や物理的性質が変化することがあり、この現象を「時効」と言います。
固溶化熱処理が不充分であったり、冷間加工により結晶にひずみが存在する場合に顕著に起こる現象であり、結晶学的に安定な状態に変化する現象のことです。

常温状態(時間の経過)で発生する「自然時効」と、低温焼鈍※(テンパー処理)により強制的に高温にすることで発生させる「人工時効」があります。
※低温焼鈍とは、応力緩和(Stress Relaxation)とも呼ばれ、応力除去(Stress Relief)させる熱処理です。
また、鋼種設計で鉄系・非鉄系を問わず、熱処理(人工時効)による加熱で第二相を析出させ、強度を向上させることができる合金が、析出硬化系と言われる材質になります。


時効硬化

時効により強度が上昇する現象を「時効硬化」と言います。英語で Age hardening です。


時効処理

材料を時効させる処理を「時効処理」と言います。英語で Aging treatment です。

次は「時効」に併記されることが多いワード「析出」について説明します。


析出とは

温度の変化により素地(マトリクス)に溶け込んでいた物質が新たな化合物(第二相)として出現する現象を「析出」と言います。
高温の飽和食塩水を冷却すると食塩が析出(晶出)するのと同じように、析出硬化系の材料をある温度にすることで、材料素地(マトリクス)から新たな第二相として金属化合物が出現(析出)します。

析出硬化

析出により硬化する現象を「析出硬化」と言います。英語で Precipitation hardening です。原子構造で模式的に表したものが下の図になりますが、析出物が転位を阻害する障害物となるため変形しにくく(=硬化)なります。 こちらのページに加工硬化や転位についての記事もありますので参考にしてください。
析出硬化の模式図

析出硬化処理

析出硬化させるための熱処理を「析出硬化処理」と言います。英語で Precipitation hardening treatment です。


時効処理と析出硬化処理の違い

通常「時効処理」とは、時間経過に伴う自然時効や低温焼鈍によって機械的性質や物理的性質が変化することを指し、「析出硬化処理」とは、析出硬化系の材料を析出硬化熱処理することを指します。
しかしながら、析出硬化処理を行うことにより低温焼鈍と同様の効果を伴うことから、時効処理も析出硬化処理も同じ意味で扱われることが多くなっています。

時効硬化(析出硬化)する合金

上述の通り、時効硬化と析出硬化について説明いたしましたが、時効によって硬化(強度が上昇)する合金にはいくつかの種類がありますので、以下にそれぞれの種類と主な材質例を挙げます。

ステンレス鋼

主に600番系の析出硬化系ステンレス鋼が流通しています。
クロムニッケル系のステンレス鋼に、Al・Cu・Mo・Ti等を少量添加し、熱処理(析出硬化処理)を行い、素地(マトリクス)に新たな化合物(第二相)を析出させ硬化する様に、成分設計された鋼種です。
析出する第二相は素地がマルテンサイト組織の時に析出します。 固溶化状態のオーステナイト組織の時は析出しません。

SUS630(17-4PH)やSUS632J1(15-7PH)は、固溶化状態でマルテンサイト組織であり、1回の熱処理で析出硬化させることができます。

SUS631(17-7PH)やTOKKKIN 350(AISI 633相当)は、固溶化状態でオーステナイト組織であり、第一弾の処理として素地の組織をマルテンサイト組織に変える処理『熱処理によるマルテンサイト変態「T処理・R処理」および冷間加工による加工誘起マルテンサイト変態』を行うことにより、素地をマルテンサイト組織にした上で、第二弾の熱処理を行い第二相として金属化合物を析出させ硬化させる事ができます。

アルミニウム合金

2000系、6000系、7000系のアルミニウム合金が時効硬化します。
ジュラルミンと呼ばれる材種もこれらの種類となります。
2000系は常温でも時効硬化が起こるのに対し、6000系7000系は時効硬化熱処理をすることで時効速度を人工的に早めます 。

銅合金

ベリリウム銅やチタン銅、コルソン合金などが時効硬化します。

マルエージング鋼

信頼性の高さから航空機などで使われることもあるマルエージング鋼も時効硬化します。
固溶化状態でマルテンサイト組織であり、1回の熱処理で析出硬化させることができます。

ニッケル合金

Alloy718やAlloy X-750、HAYNES 282などが時効硬化します。


コバルト合金

MP35NやElgiloy合金などが時効硬化します。

当社で取り扱う時効硬化や析出硬化する材料について

当社では、時効する金属の中でも、以下の材質の取り扱いがあります。
見積り依頼はもちろん、技術的なご相談などもお気軽にお問い合わせください。

横にスクロールしてご覧いただけます。

分類 材質名 主要成分
析出硬化型ステンレス鋼 SUS631(17-7PH) 17Cr-7Ni-1Al-Fe
SUS632J1(15-7PH) 15Cr-7Ni-1.5Si-Cu-Ti -Fe
TOKKIN 350 17Cr-5Ni-3Mo-1Mn-N-Fe
マルエージング鋼 MAS-1 19Ni-9Co-5Mo-Ti-Al-Fe
ニッケル合金 Alloy718 18Cr-5Nb-3Mo-Al-Ni
Alloy X-750 16Cr-1Nb-2.5Ti-7Fe-Al-Ni
HAYNES 282 20Cr-10Co-9Mo-2Ti-1.5Al-Ni
コバルト合金 MP35N 35Ni-20Cr-10Mo-Co

 

また、これらの材料をはじめ、金属材料に関する技術資料をご用意しています。
是非、お気軽にダウンロードください。

 

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