
【翻訳│日英中韓】金属材料の専門用語 ー圧延編ー
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熱伝導とは、物体内部に温度差が存在するときに熱が移動する現象のことです。
物体の自由電子の移動や原子・分子の格子振動によって熱が運ばれていくことにより起こり、熱は高温から低温へと移動していきます。また、熱伝導は同一物体内だけでなく、温度が異なる2つの物体間においても起こります。
日常生活における熱伝導の身近な例としては、湯たんぽやカイロに触れると肌に熱が伝わり暖かいと感じたりすることや、やかんを火にかけると、火の熱さが底から側面へと伝わりやかん全体が熱くなったりすることなどが挙げられます。
熱の伝わりやすを数値で表したものを、熱伝導率、または熱伝導度といいます。
熱伝導率は、物質の厚さが1mで両面の温度差が1℃のとき、1㎡あたりにどれくらいの熱量(W)が伝わるかを示しており、単位は、W/(m·K)で表されます。数値が大きいほど熱が伝わりやすい材料といえ、固 体>液体>気体の順で熱伝導率は高くなります。
熱いお皿や鍋をつかむとき、素手では熱すぎるため持てず、鍋つかみや乾いたタオルなどを使うことがあると思います。これは、布に含まれる空気(=気体)の熱伝導率が低く熱が伝わりにくくなるため、熱いものでも火傷をせずにつかむことができるのです。
熱伝導と似た言葉で「熱伝達(対流熱伝達)」という用語がありますが、こちらは「熱伝導」とは異なる現象を示しています。
熱伝導は、物質そのものは移動せず熱が移動しますが、熱伝達は、物質(流体)の移動によって熱が伝わる現象のことをさします。
熱伝達を利用した身近なものとして、エアコンが挙げられます。
エアコンで部屋を暖めると、温かい空気は上に、冷たい空気は下に流れていきます。その流れを繰り返しながら空気が循環し、部屋全体が暖かくなるのは、風(流体)の移動による熱伝達の現象によるものです。
ちょこっとメモ
熱の伝わり方は、上記で言及した「熱伝導」「熱伝達」に加え、「熱放射(熱輻射)」の3つに分けることができます。
「熱放射(熱輻射)」とは、熱が赤外線や遠赤外線などの電磁波を介して運ばれる現象のことです。電磁波そのものは熱ではなく、物質に吸収されることで熱を発し、電磁波の波を伝える媒体がない真空状態においても熱が伝わる性質を持ちます。
太陽の熱が地球の私たちに伝わるのは、熱放射によるものです。太陽の熱は電磁波として放出され、電磁波が地球の地面に吸収されると熱を発します。そして、暖められた地表面から熱が赤外線として放出され大気が暖められているのです。
金属は、固体のなかでも熱伝導度が非常に大きく、これは、金属がもつ「自由電子」の動きによります。
金属以外の固体(絶縁体)は、原子が結晶構造を造り、一つの原子が振動すると、それが隣の原子にも伝わることで熱が伝わっていく仕組みになっています。
一方、金属の場合は、電子が自由に動き回ることで熱を運びます。よって、原子の格子振動による熱の伝わり方よりも広い範囲に素早く熱が伝わり、金属以外の固体と比べ熱伝導率がはるかに大きくなるのです。
また、金属のなかにおいても熱伝導率は大きく異なります。
金属の中では、銀>銅>金>アルミニウムの順に高い熱伝導率をもちます。銀や金は非常に高価であるため、工業用として熱伝導目的で使用する場合は、銅やアルミニウムが使用されることがほとんどです。
一方、熱伝導率が低いステンレス鋼は、熱を伝えにくいという特性を活かし浴槽、魔法瓶、液体窒素容器等に利用されています。
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ちょこっとメモ
熱伝導と同様、電気伝導においても電子が自由であるほど電気の流れも大きくなるので、熱伝導率の大きい金属ほど電気伝導率も大きくなります。
導電率も銀>銅>金>アルミニウム>>ステンレス鋼の順に悪くなるため、ステンレス鋼を接点ばねやその他の導電用途として使用する場合には、めっきまたはクラッドをするなどその欠点を補う必要があります。
また、導電率の高い銅においても、摩耗や耐食性の面でやや懸念があるため、重要部品においては、必要な部分にだけめっきやクラッドなどをして使われることもあります。
材料 | 熱伝導率 W/(m・K) |
導電率 IACS% |
---|---|---|
銅 | 393 | 100 |
アルミニウム | 222 | 66 |
ベリリウム銅 | 126 | 26.5 |
黄銅 | 117 | 27.8 |
ニッケル | 92.1 | 26 |
りん青銅 | 79.5 | 18 |
鉄 | 73.3 | 13.3 |
ジュラルミン | 61.5 | - |
鋼 | 50.2 | 9.6 |
洋白 | 29 | 5.7 |
SUS430 | 26 | 2.9 |
SUS420J2 | 24.7 | - |
チタン | 17.2 | 3.5 |
SUS301 | 16.3 | - |
SUS304 | 16.3 | 2.4 |
SUS316 | 16.3 | 2.3 |
SUS631 | 16.3 | 2.2 |
※熱伝導率のデータは、当社テクニカルガイドより抜粋
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アルミニウムや銅は熱伝導率が高いため、熱源からの熱を材料全体に伝えることで熱を放出しやすくなり、電子機器内で放熱目的で利用されることも多くなっております。
しかしながらこれらの材料は熱伝導が高い反面、強度はステンレスの何倍も低いため、板厚を薄くできなかったり、外力で容易に曲がってしまったり、といった課題がございます。
そのような時には、芯材にステンレス等を挟んだアルミニウムクラッド材などが有効になります。
当社では高強度軽量型放熱板素材として、アルミ/ステンレス/アルミの3層クラッドも製造しております。
クラッド/ASAクラッドに関する詳しい情報は、以下よりご確認ください。
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以上熱伝導について解説いたしました。
当社では、今回解説した熱伝導度に限らず、金属材料の様々な特性を考慮しながらお客様のご要望にマッチする鋼種をご提案させていただきます。
金属材料に関してお困りごとや疑問点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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