SUS316LとSUS316は何が違うのですか？ │ 精密金属材料の特殊金属エクセル(TOKKIN)

公開日時 : 2022/03/07

技術コラム

SUS316とSUS316Lの違いについて解説しています。

SUS316LとSUS316の違いについて
化学成分
添加元素の腐食への影響
機械的特性
磁性（非磁性）
主な用途
SUS316LとSUS316の価格差について

SUS316LとSUS316の違いについて

SUS316は、オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304にNi増加、Mo添加した鋼種です。
この成分調整により、海水をはじめとする各種媒質に対しSUS304よりも優れた耐食性があります。
SUS316Lは、SUS316のC量を低減させた鋼種で、SUS316の特性に加え耐粒界腐食性をもたせた鋼種です。

SUS304

→ Ni増加・Mo添加（耐食性向上）・・・SUS316

→ C低減（＋粒界腐食性向上）・・・SUS316L

なお、JIS G 4305には、これら以外にもSUS316N、SUS316LN、SUS316Ti、SUS316J1、SUS316J1Lなどが規定されていますが、いずれも流通性が低いため紐付き以外での入手は困難です。

化学成分

SUS316LとSUS316の成分は下表の通りです。（JIS G 4305による）

鋼種名	C	Si	Mn	P	S	Cr	Ni	Mo	その他
SUS304	≦0.08	≦1.00	≦2.00	≦0.045	≦0.030	18.00～20.00	8.00 ～ 10.50	—	—
SUS316	≦0.08	≦1.00	≦2.00	≦0.045	≦0.030	16.00～18.00	10.00 ～ 14.00	2.00 ～ 3.00	—
SUS316L	≦0.030	≦1.00	≦2.00	≦0.045	≦0.030	16.00～18.00	12.00 ～ 15.00	2.00 ～ 3.00	—

※比較として、SUS304の成分を併記しています。
※赤字はSUS304と比較し、増減のある値となります。

添加元素の腐食への影響

低C化・・・粒界腐食低減
Ni添加・・・全面腐食低減
Mo添加・・・孔食、応力腐食割れ、隙間腐食低減

機械的特性

機械的特性は下表の通りです。（JIS G 4305による）
SUS316、SUS316Lでは大きな差はありませんが、SUS316Lの方が炭素含有量（C量）が低いため加工硬化しにくい傾向にあります。

鋼種名	耐力 N/mm2	引張強さ N/mm2	伸び％	硬さ HV
SUS304	205≦	570≦	40≦	≦200
SUS316	205≦	520≦	40≦	≦200
SUS316L	175≦	480≦	40≦	≦200

※固溶化熱処理状態、板厚0.3mm以上の場合
→当社では、一般的な軟質材以外にも硬さや引張強さを調整した材料もご提供可能です。
詳細は高耐食ステンレス鋼（SUS316L, SUS316）のページも参照ください。

磁性（非磁性）

SUS304同様、SUS316、SUS316L共に焼鈍状態では非磁性（磁石に付かない）となります。SUS304よりもNi含有量が高いため、冷間加工後もオーステナイト組織が安定し、一般的な非磁性用途としてもお使いいただけます。
（SUS304では加工後に着磁してしまう、とお困りの方にオススメです）
→非磁性ステンレスにつきましては、TOKKIN 305Mのページも参照ください。

主な用途

SUS316、SUS316Lは共に、汎用オーステナイト系ステンレス鋼SUS304よりも、耐食性、冷間加工後の非磁性維持の面で優位性がある材料です。
当社が製造する薄板の場合、ダイヤフラムやベローズなどの耐食性が求められる用途、時計裏蓋や体温計、注射針などの医療器具にも使われます。
なお、SUS316Lはサージカルステンレスとも呼ばれ、医療用器具やアクセサリーとしても使われています。