オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304のニッケル（Ni）含有量を高め、更にモリブデン（Mo）を添加することで耐食性を向上させた鋼種です。
SUS304にNi増加、Mo添加＝SUS316・・・耐食性向上（孔食や応力腐食割れなど）
SUS316にNi高め、C低減＝SUS316L・・・＋粒界腐食性向上
※SUS316Lの“L”はLow carbonを表しています。
また、高耐食ステンレス鋼はC量が低くNi量が多いので、焼鈍状態の硬さが低く加工硬化が少ないため、絞り用途としても向いています。
なお、固溶化熱処理状態では非磁性ですが、強加工により弱い磁性を持つようになりますので、注意が必要です。
この鋼種は、薄板ステンレス鋼の中では比較的流通量が少ないため入手しにくい材料ですが、当社ではこのような材料もカスタムスペックで製造しています。
板厚0.10mm未満の箔、特殊寸法、硬質仕上げ、短納期、小ロットなど、お気軽にご相談ください。
振動モーター、 カメラモジュール、 FPC、 燃料電池、 注射針、 留置針、ベローズ、ダイヤフラム、 マイクロポンプ、 ステント、 液面計ベルト、時計裏蓋、体温計
板厚： 0.010 ～ 3.0mm ※材質による
幅 ： 3.0 ～ 300mm
当社では特に指定のない場合、JIS規格に準拠して製造いたします。相当する海外規格は参考となります。
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| 当社呼称 | 日本 | アメリカ | 欧州規格 | 国際規格 | |
|---|---|---|---|---|---|
| JIS | UNS | AISI/ASTM | EN | ISO | |
| SUS316 | SUS316 （JIS G4305） |
S31600 | 316 | 1.4436 | X3CrNiMo17-13-3 |
| SUS316L | SUS316L （JIS G4305） |
S31603 | 316L | 1.4404 1.4432 1.4435 |
X2CrNiMo17-12-2 X2CrNiMo17-13-3 X2CrNiMo18-14-3 |
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| 鋼種名 | C | Si | Mn | P | S | Cr | Ni | Mo | Fe |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SUS316 | ≦0.08 | ≦1.00 | ≦2.00 | ≦0.045 | ≦0.030 | 16.00～ 18.00 |
10.00～14.00 | 2.00～3.00 | Bal. |
| SUS316L | ≦0.030 | ≦1.00 | ≦2.00 | ≦0.045 | ≦0.030 | 16.00～ 18.00 |
12.00～15.00 | 2.00～3.00 | Bal. |
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| 鋼種名 | 密度 ［g/cm3 ］ |
比熱 ［J/(kg・K)］ |
電気抵抗 ［μΩ・cm］ |
ヤング率 ［GPa］ |
熱膨張係数 ［×10-6/K］ |
熱伝導率 ［W/(m・K)］ |
融点 ［℃］ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SUS316 SUS316L |
8.03 | 502 | 74 | 193 | 16.0 （0～100℃） |
16.3 | 1370～1397 |
ご希望の硬さ（仕上げ）にて製造いたします。なお、板厚によっては対応出来ない仕上げもございますので、まずはご相談ください。
※極薄箔の場合、不具合（折れ、シワなど）発生の懸念があるため、焼鈍仕上げ（BA, 2B）などの軟質材は対応できない場合がございます。
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| 鋼種 | 状態 | 硬さ | 引張強さ | 伸び |
|---|---|---|---|---|
| SUS316 | 焼鈍仕上 | 140～180 | 500～750 | 45～60 |
| 強圧延仕上 | 360～400 | 1050～1350 | 1～ 3 | |
| SUS316L | 焼鈍仕上 | 130～180 | 500～ 750 | 45～65 |
| 強圧延仕上 | 310～360 | 900～1200 | 1～ 5 |
ステンレス鋼は、表面に緻密に形成されたCr（クロム）の極薄い酸化皮膜（不働態皮膜）によって錆が内部に進行することを防いでいるため、優れた耐食性を持っています。
その不働態皮膜の厚さは1～3nm（ナノメートル）程度と極めて薄く、また、不働態皮膜は自己修復機能があるため、通常の環境であれば皮膜が破れても鋼中のCrを使って再生することができます。
※不働態皮膜が形成されるためにはCrは11%以上の含有が必要とされています。
しかしながら、不働態皮膜を持っていても、使用環境（海水、塩水など）によってはその一部が破壊され、局部的に腐食（孔食）が進行することがあります。
SUS316/SUS316Lに添加されたMo（モリブデン）には、破壊された不働態皮膜を修復する機能があるため、SUS316/SUS316LはMoを含有していないSUS304よりも耐食性が良くなるのです。
また、ステンレス鋼に少量含有しているC（炭素）についても、耐食性が影響する場合があります。
Cは素地に固溶しているCrと結合しCr炭化物を生成し易く、そのCr炭化物は結晶粒界に析出します。その結果、析出したCr炭化物近傍は低Crとなるため耐食性を低下させ、粒界腐食が発生する原因になります。C低減以外にも、Cr炭化物生成の抑制には、Ti（チタン）やNb（ニオブ）の添加も効果があります。
※SUS316L（L＝Low carbon）につきましては、C含有量が更に低めに調整されています。
SUS316とSUS316Lの違いについては、こちらの記事をご確認ください。
ステンレスの耐食性 │ 錆にくいステンレス鋼の種類と不働態、粒界腐食について
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当社で扱うすべてのステンレス鋼で箔材を製造しています。
