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延性破壊・脆性破壊・疲労破壊│その違いや破面の特徴について

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延性破壊・脆性破壊・疲労破壊│その違いや破面の特徴について
延性破壊・脆性破壊・疲労破壊の違いや、それぞれの破面の特徴について解説しています。

延性破壊とは

延性破壊とは、材料に応力を加えたときに少なくとも数パーセント以上の塑性変形を伴い破壊にいたる現象のことをいいます。
一般的に、延性破壊に至る材料は下図のような応力ひずみ曲線図をえがきます。金属材料により降伏点が明確にある場合とない場合がありますが、延性破壊は、材料が十分に伸びた後に破壊に至ります。延性破壊は、金属だと銅やアルミニウム等の伸びが大きい材料で通常みられる破壊形態です。
延性材料の応力ひずみ曲線

延性破面

延性破壊を起こした材料の破壊が生じた面を”延性破面”といいますが、特徴的な延性破壊の形態として以下の3つがあげられ、それぞれ異なる破面が観察されます。
徴的な延性破面


カップアンドコーン型破壊

カップアンドコーン型破壊は、軟鋼で多く見られる形態です。 金属材料に引張り荷重がかかると局部収縮が生じ、中心部で亀裂が入ります。そして、亀裂が周辺部へと伝わり、最後に残された部分が引張方向と45度にせん断破壊を起こし、一方はくぼみ、他方は円すい状の形になることから、このように呼ばれています。
カップアンドコーンの破面は、鈍い灰白色であり、中心部の底の部分は電子顕微鏡などで更に拡大して観察すると、繊維状の破面とディンプルと呼ばれる多数の小さいくぼみを見ることができます。
ディンプルは、力が加わる方向によって変形し、カップアンドコーン型破面の中心部では円形上のくぼみである等軸ディンプルが、周辺部では楕円形の伸長ディンプルが観察されます。


せん断破壊

せん断破壊は、最大せん断応力が作用する破壊面と平行に原子の結合が切れることをいい、上述した、カップアンドコーンの側面部や結晶粒が粗大化した金属でよくみられる形態です。
破面を電子顕微鏡などで観察すると、せん断変形により楕円形に伸びた伸長ディンプルが 観察されることがあります。


チゼルポイント型破壊

チゼルポイント型破壊とは、柔らかい金属で多く見られ、材料が全体的に伸び、2つのすべりの交差部で最終的に破断します。
破断部がのみ(Chisel)の刃型のようにみえることから、このように呼ばれています。 チゼルポイント型破壊の破面を電子顕微鏡などで観察するとうねった縞状の模様をした破面、または無特徴の破面がみられるのが特徴です。




脆性破壊とは

脆性破壊とは、材料に応力を加えた際にほとんど塑性変形を伴わず破壊にいたる現象のことをいいます。
延性破壊と異なり、き裂伝播が高速で起こり一瞬のうちに破壊に至るのが特徴であり、応力ひずみ線図は以下のような曲線を描きます。

脆性材料の応力ひずみ曲線

脆性破壊は、ガラス、陶器や金属だと鋳鉄や焼入れをした鋼などでよくみられる現象ですが、通常延性破壊を起こす材料も、低温環境下では脆性破壊を起こすことがあるので注意が必要です。低温脆性については、こちらで詳しく解説していますので併せてご確認ください。

脆性破面

脆性破壊を起こした材料の破壊が生じた面を”脆性破面”といいますが、特徴的な脆性破壊の形態として以下の3つがあげられ、それぞれ異なる破面が観察されます。


へき開破壊

へき開破壊とは、亀裂速度が高速であり、特定の結晶面(へき開面)に沿って破壊する現象のことをいいます。また、へき開面は、へき開ファセットと呼ばれる結晶粒サイズ程度の破面領域より成っており、破壊はいくつかのへき開面にまたがっているので、へき開ファセットの面には、へき開段とよばれる段差が形成されます。
そして、へき開段が集まり”リバーパターン”と呼ばれる、川状の模様が破面に現れることがへき開破壊の大きな特徴です。



擬へき開破壊

焼入れ、焼き戻し材などでよくおこり、へき開破壊と同じくリバーパターンはみられるがへき開面での破壊かどうかが不明瞭な破壊を擬へき開破壊と呼びます。
へき開破壊より、亀裂速度が遅い場合に生じます。



粒界脆性破壊

応力腐食割れや、水素脆化割れ、焼き戻し脆化などでよくみられ破壊であり、粒界に沿って殆ど塑性変形をせずに破壊にいたります。
粒状の破面がみられることが特徴です。

疲労破壊とは

疲労破壊とは、繰り返しの応力(荷重)がかかり引張強さなどの静的強度以下でも破壊にいたる現象をいいます。 通常、静的破壊よりも低い負荷の繰り返しによって起こり、き裂の発生、進展、断面減少により破断といった経過をたどります。
疲労強度については、こちらで詳しく解説していますので併せてご確認ください。

疲労破面

疲労破壊を起こした材料の破壊が生じた面を”疲労破面”といいますが、疲労破面には以下のような特徴が観察されます。


脆性的破面

通常延性破壊を起こす材料も、塑性変形がき裂進展経路の近傍に限られるため、脆性的な外観の破面を呈します。
最終破断部は引張や圧縮の応力による破断のため、塑性変形を伴う場合が多い。



ビーチマーク

疲労破壊は、繰り返し応力によりき裂が徐々に進展しますが、繰り返し応力は変動するため、その変動時のき裂前縁が破面上に縞模様として残り、この縞模様を「ビーチマーク」(海岸の波打ちのような模様)と呼びます。
ビーチマークは破壊の進行方向に垂直に表れるため、疲労破壊の起点を推定することもできます。
なお、ビーチマークは肉眼などのマクロ的観察でみられる破面で、疲労破壊以外でも見られる場合があります。



ストライエーション

疲労破面を電子顕微鏡などでミクロ的観察をすると、ビーチマークと同様の方向に、さらに細かい縞模様が見られます。
これは、繰り返しサイクルにより発生した亀裂が残ったもので、これを「ストライエーション」と呼びます。
ストライエーションは疲労破壊特有の破面となります。

まとめ

以上、延性破壊、脆性破壊、疲労破壊の違いやそれぞれの破面について解説いたしました。

特殊金属エクセルでは、精密金属材料の開発・製造・販売を行っております。
金属材料の破壊についてはもちろん、その他技術的なご相談も承っていますのでお困りごとや課題がございましたらお気軽にお問合せフォームよりご連絡ください。

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