電気抵抗を分かりやすく解説│抵抗が生じる原因や金属の電気抵抗率一覧
ステンレス鋼は、表面にある不働態被膜の作用により”錆びにくい”金属として知られています。
しかし、汚れの付着や金属との接触、塩素イオン濃度が高い環境下等においては不働態被膜の再生が妨げられたり、破壊されるなどして腐食が発生し、錆びてしまうことがあります。
ステンレス鋼の腐食形態は、以下の図のよう全面腐食と局部腐食に大別され、
さらに局部腐食は孔食、すき間腐食、粒界腐食、異種金属接触腐食、応力腐食割れ、エロージョン・コロージョンに分けることができます。均一腐食ともよばれ、表面が均一に腐食する形態です。
酸化力が弱い塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などにされされるなど、不働態被膜ができにくい環境で発生します。全面腐食は、局部腐食と異なり緩やかに腐食が進行します。また、腐食の進行具合を把握し易く、余寿命の予測が容易にできるため対策を講じやすくなっています。ステンレス鋼の場合、全面腐食が発生することは殆どありません。
不働態被膜の一部が破壊され、表面が局所的に腐食する形態です。
耐食性の高い材料に良く見られ、全面腐食とは異なり早い速度で腐食が進行します。
また、目視で腐食の発見が難しく、部材が破壊するまで腐食に気づかないこともあります。
ステンレス鋼の局部腐食は、以下の形態があります。
金属表面が、孔状に腐食する現象です。
ステンレス鋼の孔食の主な例は、海の近くや水中など塩素イオン濃度が高い環境下において、不働態被膜が局所的に破壊されることにより発生します。発生した孔食は、内部をアノード、腐食していない部分をカソードとしてマクロ腐食電池を形成し、この電池の作用により全面腐食よりもかなり早い速度で腐食が進行していきます。 孔食を防ぐ方法としては、塩素イオン濃度を下げる、クロムやモリブデンを多く添加したステンレスを使用することなどが挙げられます。
部材間のすき間部分に発生する腐食です。
例としてボルト・ナットの隙間や異物の下などがあります。すき間部分は酸素の供給が不十分なため、外部と酸素濃度差が発生し、酸素濃淡電池が形成されます。塩素イオン濃度が高い環境下においては、この電池の作用により塩化物イオンがすき間内部に移動し、不働態被膜が破壊されることにより腐食が発生します。
すき間腐食を防ぐ方法としては、根本的にすき間がないような構造に変更したり、孔食と同じく塩素イオン濃度を下げる、クロムやモリブデンを多く添加したステンレスを使用することなどが挙げられます。
オーステナイト系ステンレス鋼を400~800℃位に加熱すると、鋼中の炭素がクロムと結合しクロム炭化物が結晶粒界(結晶と結晶の境界面)に析出します。この現象を「鋭敏化」と呼びます。不働態被膜の生成に必要なクロムが炭素と結合してしまうと、その周辺はクロムが少ない部分となるため、耐食性が低下し粒界に沿って腐食が進行します。
粒界腐食を防ぐ方法としては、炭素含有量を低減した鋼種(SUS304L、316L、316J1L)や炭素との親和力がクロムよりも大きいチタンやニオブ等の造炭化物元素を添加したステンレス(SUS321、347)を使用することなどが挙げられます。
流電腐食、電食、ガルバニック腐食とも呼ばれ、2つの異なる金属が電解質中で接触するときに発生する腐食です。
これは、金属間の電位の違いから両者の間に腐食電池が形成され、電位の低い方の陽イオン化が進むことにより起こる現象です。異種金属接触腐食を防ぐ方法としては、金属同士が直接接しないように絶縁する方法や、接触する金属の電位差を小さくすること、接触する金属の面積比など異種金属接触腐食に影響する因子を調整するなどといった方法があります。
腐食環境と材料と引張応力の3つの要因が揃ったときに発生する腐食です。
ステンレスは、塩素イオン濃度が高い環境下において孔食が発生し、そこに引張応力が加わることで応力腐食割れに繋がることが多く、特にオーステナイト系ステンレス鋼で発生しやすい腐食となっています。
応力腐食割れを防ぐ方法としては、フェライト系ステンレス鋼に材料を変更したり、塩化物などの腐食環境から遠ざける、また応力を軽減する加工を行うなど、応力腐食割れの要因となる3因子(腐食環境、材料、引張応力)のいずれかを取除くことが必要です。
流体、固体、または気体が材料への衝突を繰り返し、材料表面が摩耗し減肉する現象のことをエロージョンといい、エロージョンにより腐食が発生する現象をエロージョン・コロージョンといいます。
ステンレスは、不働態被膜の作用により比較的エロージョン・コロージョンに強いといわれています。
当社での取り扱いステンレス鋼に関しましては、こちらのページに詳しい種類が載っていますのでぜひご確認ください。
ステンレス鋼の中でも、腐食の要因によってお勧めする鋼種は変わります。また、使用環境やその他の要求特性によっては、ステンレス鋼以外をご提案する場合もございます。
錆や腐食でお困りでしたら、まずはお問い合わせフォームよりご相談ください。
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