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透磁率とは?比透磁率との違いやヒステリシス曲線の見方

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透磁率とは?比透磁率との違いやヒステリシス曲線の見方
透磁率、比透磁率について解説。また、ヒステリシス曲線の見方についても図解を用いながら分かりやすく解説いたします。

透磁率とは?

透磁率とは、物質の磁化のしやすさを数値で表わしたものです。

一般的にすべての物質は、外部から磁界を加えると磁化される”磁性体”ですが、その度合いは物質により大きく異なります。

例えば、鉄を磁石に近づけると磁石とくっつきますが、同じ金属である銅やアルミは磁石にくっつきません。これは、アルミや銅が外部からの磁界によって全く磁化しないというわけではなく、外部磁場による磁化の程度が非常に弱いため磁石につくほど磁力を持たないことによります。

このように、物質により磁気の帯びやすさは異なり、それを数値で表したものが”透磁率”です。透磁率μは、磁束密度Bと磁界の強さHを用いて、以下の計算式で求められます。

透磁率μの計算式

μ=B/H
 μ:透磁率
 B:磁束密度
 H:磁界の強さ

 

ちょこっとメモ

磁性体は一般的に強磁性体、常磁性体、反磁性体にわけることができます。常磁性体や反磁性体は磁性体ではありますが、磁石につくほどの磁力はないため一般的に「非磁性」とも呼ばれます。

 

軟磁性材料と硬磁性材料のヒステリシス曲線

  • 強磁性体

    外部から磁界を加えたとき強い磁場を帯びる物質であり、外部磁界をゼロにしても強い磁気が残ります。一般的に磁性体というと強磁性体のことを指すことが多いです。例として、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)などがあります。強磁性材料は、さらに硬質磁性材と軟質磁性材に分けられ、それぞれ以下のような特徴があります。

    • 硬質磁性材(硬磁性材料)

      外部磁場を取り除いても磁化が残り、さらに反対の磁場をかけたときの保持力Hcがとても大きい材料(右図b=緑参照) 磁石がこれにあたります。

    • 軟質磁性材(軟磁性材料)

      磁場が加わると磁化されやすく、磁場を取り去ると元に戻りやすい材料。透磁率μが大きく、保持力Hcが小さい。(右図a=赤参照) 例として、鉄、電磁軟鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、電磁ステンレス、アモルファスなどがこれに当たります。

  • 常磁性体

    外部から強い磁界を加えると、磁気を弱く帯びる物質のことです。磁石につくほどの磁力はなく、外部磁界をゼロにすると磁気はなくなります。例として、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)などがあります。

  • 反磁性体

    外部から磁界を加えたとき、外部磁界と反対の向きに極めて弱い磁気を帯びる物資のことです。外部磁界をゼロにすると磁気はなくなります。 例として、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)などがあります。

 

 

比透磁率

磁化のしやすさを表す値として透磁率だけでなく”比透磁率”も用いられることが多くあります。比透磁率とは、真空の透磁率μ0(=4π×10-7[H/m])を基準として物質の透磁率との比を表したものです。計算式は以下の通りです。比透磁率は1に近いほど磁化されにくいといえ、非磁性ステンレスでは1.004~1.01程度となります。

比透磁率の計算式

μr=μ/μ0
(μr:比透磁率 μ:透磁率 μ0:真空の透磁率)

 

 

ヒステリシス曲線

ヒステリシス曲線とは、磁性材料に外部磁界を与えた際の材料の磁化状態、磁界の強さ(H)によって生じる磁束密度(B)の変化を表す曲線のことです。
材料が磁化していない状態から飽和するまで磁場をかけ、飽和してから逆方向に磁場がゼロになるまで磁化力を減らしていきます。 そして、更にマイナス方向に飽和させた後、今度は、再びプラス方向へ磁化力を飽和するまでかけ続けると下図のような曲線が描かれます。 この曲線は、ヒステリシス曲線、B-H曲線、B-Hカーブ、磁気ヒステリシス曲線、磁化曲線などと呼ばれます。

ヒステリシ曲線

 

ヒステリシス曲線の見方

ヒステリシス曲線の横軸は外部から与えられた「磁場の強さ(H)」を、縦軸は材料自体が磁化された強さの「磁束密度(B)」を表しています。

 

0→aの経路

磁界が完全にゼロの状態(原点)から、磁場を加えると次第に磁束密度が増加し、点aまでのような曲線を描きます。 この曲線は初磁化曲線と呼ばれ、初磁化曲線上の任意の点と原点とを結ぶ線の傾きを透磁率μといいます。また、原点における磁化曲線の接線を初透磁率μiと呼び、最大の値をとる透磁率を最大透磁率μmと呼びます。
初透磁率μiが1.02以下であれば、磁石に付かないレベルであるため非磁性としても問題ありませんが、近年はよりシビアな値を求められることもありますので、用途によって個別設定が必要な場合があります。

ヒステリシス曲線 0→a

磁場を強くしていくと磁束密度の限界点(点a)達し、これを飽和磁束密度Bsと呼びます。

 

a→bの経路

飽和磁束密度に達したら徐々に外部磁界を減少させ0にしていくとa→bのような曲線を描きます。外部磁界がゼロになっても磁化は残り、これを残留磁束密度Br(点b)と呼びます。

ヒステリシス曲線 a→b

 

b→cの経路

磁界がゼロに達したら、今までとは逆向きの磁界を磁束密度がゼロになるまでかけていくとb→cのような曲線を描きます。磁束密度がゼロになる際の外部磁場(点c)の強さを保持力 Hc と呼びます。保磁力が大きいほど良い磁石といえ、永久磁石にはできるだけ大きな値を求められます。逆に保磁力が小さいほど良い軟磁性材料となります。

ヒステリシス曲線 b→c

 

c→dの経路

さらに逆方向に磁場をかけ続けると、磁束密度がこれ以上マイナス方向に大きくならない点(点d)に達します。

ヒステリシス曲線 c→d

 

d→aの経路

点dに達したら今度は正の方向に磁場をかけていくと、点e、点fを通り点aに達する曲線を描きます。以降は点a→b→c→d→e→f→a→・・・と、初回と同じ線をループする曲線が描かれ、このループ状の曲線をヒステリシスループと呼びます。

 

 

単位

磁気特性の記号、単位は以下の通りです。

横にスクロールしてご覧いただけます。

磁気特性 記号 単位
SI単位系 CGS単位系
磁界の強さ H A/m Oe
磁束密度 B T G
保磁力 Hc A/m Oe
飽和磁束密度 Bs T G
残留磁束密度 Br T G
透磁率 μ H/m 無名数
初透磁率 μi H/m 無名数
最大透磁率 μm H/m 無名数

※SI単位からCGS単位への変換は、1A/m=4π/103Oe(79.6A/m≒1Oe)、1T=104Gとなります。

※単位の読み方:A/m(アンペア毎メートル)、H(ヘンリー毎メートル)、T(テスラ)、G(ガウス)、Oe(エルステッド)

 

 

まとめ

以上、透磁率とヒステリシス曲線の見方について解説いたしました。

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