PHステンレス鋼って何?17-7PH、15-7PHの数字や記号の意味を解説
準安定オーステナイトの析出硬化系ステンレス鋼に分類される鋼種です。
この鋼種は「成型時にはオーステナイト系のステンレス鋼のように成型しやすく、使用時にはマルテンサイト系のステンレス鋼のように高強度であること」を目的に開発されました。
そのため、熱処理や冷間加工を組み合わせることで、相反する加工性と強度を兼ね備えることが可能な鋼種となっています。なお、17Cr-7Niの含有成分と析出硬化(Precipitation Hardening)のPHから17-7PHと呼ばれることもあります。
SUS631の各調質における機械的特性の規格値は下表のとおりです。(JIS G4313より)
横にスクロールしてご覧いただけます。
素材状態 | 析出硬化処理後 | |||||||||
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状態 | 調質記号 | 硬さ [HV] |
引張強さ [MPa] |
伸び [%] |
V曲げ 0.5t |
W曲げ 1.0t |
熱処理記号 | 硬さ [HV] |
引張強さ [MPa] |
耐力 [MPa] |
A材 | BA, 2B | ≦200 | ≦1030 | 20≦ | R90° | R90° | TH1050 | 345≦ | 1140≦ | 960≦ |
RH950 | 392≦ | 1230≦ | 1030≦ | |||||||
C材 | 1/2H | 350≦ | 1080≦ | 5≦ | 1.5t R90° | 2.0t R90° | CH | 380≦ | 1230≦ | 880≦ |
3/4H | 400≦ | 1180≦ | - | - | - | 450≦ | 1420≦ | 1080≦ | ||
H | 450≦ | 1420≦ | - | - | - | 530≦ | 1720≦ | 1320≦ | ||
EH | 480≦ | 1620≦ | - | - | - | 560≦ | 1900≦ | 1570≦ |
※EH仕上げはJIS規格ではありません。
※硬さは仕上げにかかわらず、ご希望の硬さで製造可能です。(規格レンジは40HV以上必要です)
A材(固溶化熱処理状態)では、基本的にはオーステナイト組織となり、SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼のように加工性に富む性質を示します。
このオーステナイト組織の状態から2段階の工程を経ることで強度を上げることができます。
まず、第1段階の「マルテンサイト化処理」です。
A材に熱処理もしくは冷間加工をすることでマルテンサイト組織を生成し強度を向上させます。
次に、第2段階の「析出硬化処理」です。
第1段階でマルテンサイト化させた材料に析出硬化熱処理をすることで、さらに強度を上げることができます。
これらを模式的に表したものが下図となります。
熱処理条件は図内に記載しておりますので、参考になさってください。
当社では、「A材」「C材」「CH材」の製造が可能です。
お客様での部品形状や加工方法、最終製品に求められる強度によって、当社からの供給状態は変わりますので、まずは必要特性をお申し付けください。
例えば…
絞りなどの加工性を優先するのであれば「A材」、
強い塑性加工はせず強度を優先するのであれば「C材(調質 1/2H~EH)」での供給となります。
稀に材料状態で析出硬化処理まで施した「CH材」をご要望いただくことがありますので、図内に記載いたしましたが、連続炉での熱処理(コイル材)は十分な加熱時間を得ることができず、性能の保証ができないことから当社でのCH処理は原則お断りしています。また、熱処理により表面の耐食性も低下し、錆びやすくなりますのでご留意ください。
十分な性能を得るために、お客様にて部品に加工した後にバッチ炉での熱処理をお勧めいたします。
材料状態を基準とした模式図はわかりにくいというお声もいただいておりますので、以下に工程を基準とした模式図も作成いたしました。
どちらでもわかりやすい方をご利用ください。
A材は主にオーステナイト組織となるため磁性はあまりありませんが、熱処理や圧延によりマルテンサイト組織が生成されるますと磁性が強くなります。磁性を嫌う用途にお使いの際にはご留意ください。
磁性同様、熱処理による組織変態により寸法にも若干の変化を生じます。
文献によるとマルテンサイト変態で+0.4~0.6%、時効処理で-0.05%程度という記載(※)もございますので、精密部品などにお使いの際にはご留意ください。
※部品形状や変態の進行度によってバラツキがでますので、あくまで参考値としてご認識ください。
SUS631以外の析出硬化系ステンレス鋼についてはこちらのページにより詳しい情報を載せています。
物理的性質など参考になさってください。
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